小室の民話「質蔵で踊る獅子」

これは、ずーっとむかしの話だそうです。

そのころ、村々の人びとは数年も続く不作のために、生活が苦しく困っていました。このため小室村では、古くから伝わる獅子舞いを一時中止することになりました。

そんなある日のことです。村の人たちは、酒代欲しさに、獅子舞いの道具一式を無用の長物とばかりに、近在の質屋に入れてしまいました。

ところが、質屋の蔵の中で妙なことが起こりました。

夜になると、毎晩のように蔵の中から、踊りまわる足音や笛、太鼓の音が大層にぎやかに聞こえてきました。それは、獅子舞いの祭事とそっくりのようでした。

何日も続くこの物音を聞いた質屋のあるじはびっくりしました。そして、恐ろしくなりました。こわごわと質蔵を開け、獅子舞いの道具をていねいにそろえて、この質草を自分で小室村まで持って行きました。

そこで、質屋のあるじは額に油汗をかきながら
「お金は返してもらわねえで結構だす。これは神様のものだす。すぐに引き取って下せえ」
と言って、道具一式を村の者に渡しました。それから、借金を棒引きにした上に、若干のご祝儀まで付けてくれました。

このことがあってから後は、小室村では獅子を大事にし、毎年の祭礼には必ず舞うようになったということです。

村上昭三 著「船橋の民話」より転載


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