小室の民話「長兵衛山の小割り」

むかし、この辺りの村々では、娯楽の一つとして、博打が大変はやっていました。法度にお構いなく、こっそりと隠れて博打をやっていました。

小室村に長兵衛という百姓がいました。博打が飯よりも好きで、朝から晩までやっても、まだ足りないという有り様でした。

野良仕事が一段落したある日、村人たちを集め、博打をやることにしました。家の中ではやれないので、村から少し離れた長兵衛の持ち山の中でやることになりました。近所の村の人たちも大勢加わり、いよいよ始めることにしました。

その時、上座に座っていた長兵衛は、集まった人びとの顔を見ながら
「ナァ、皆の衆、おらあ、今日はこの山を賭けるとするだ」
と、出だしに気前よく言いました。

これを聞いた人びとは、いつもより熱を入れていました。そして、目をギラギラとさせながら、「丁」だ、「半」だと、大きな声で叫び合っていました。そして、繰り返し繰り返し、張って行きました。

この日、長兵衛はどうも調子が悪く、負けがこんで来ました。さえない顔色の長兵衛は
「ちぇ、今日は全くついていねえな。今度は勝ってみせるぞ」
と言いながら、益々力んでいました。

しかし、どんどんと負けがこみ、その掛声は小さくなる一方でした。そこで、長兵衛は最初の約束通りに、負ける度に自分の持ち山を細かく分けて、周りの人たちに上げました。最後には、とうとう残らず博打のかたに取られてしまいました。

そのため、長兵衛山の図面を見ると、近年まで細かーく小割りになっていたということです。

村上昭三 著「船橋の民話」より転載

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